日本中古·中世文學, 特に說話文學における佛敎思想と死生觀についての硏究は當時の日本人の情神世界を解明するためには重要な課題である 『日本靈異記』と『今昔物語集』は作品として成立した時代を異にしながらも, 佛敎說話という救道性を知っているため, 當時の日本人の生と死に關する意識を考えるに重要な示唆を與えていると思われる. したがって『日本靈異記』と『今昔物語集』を比較することによって兩書に見られる當時の日本人の死生觀と佛敎思想との關聯性についても知ることができる. 本稿では, その先行硏究の一つとして『日本靈異記』と『今昔物語集』に見られる死後の世界の觀念の變化の樣相, すなわち奈良時代の末期成立の『日本靈異記』と平安時代の未期成立の『今昔物語集』に現れた死後の世界の觀念の差について比較的な立場で檢討し述べた.