兼好の主著である『徒然草」を讀んでみると, 兼好の目は人間に非常に多く注がれている. そのうち, 兼好が特に關心と興味を持って觀照しているのは, 入間的感情と慾忘に補われて, 暫らくも「心」を安靜に保つことのできない「愚かなる人」であろう. 兼好はそのような人人を銳い目で見つめながら, 色色の角度から入間の「心」のあり方を訓えつつ, その爲すべきことを提示している. 兼好の戒めを整理してみると, 第一に, たとえ爲りであっても, 善を傲い聖の訓えに耳を傾ける. 第二に, 世は無常であるという理と已を知る. 第三に, 無常の到來は速やかで, しかも老若を間わず襲ってくるということを心に刻みつける. 第四に, 諸緣を拾てて閑かに修行できる境地に身をおく. 第五に, 專ら佛道修行に勵むなど, 五段階にまとめられる. 要するに, 兼好の『徒然草』は彼自身の自省を行いつつ, 特に愚かな心の持ち主の人間としての道程や道念を觸發させる故に, 形式に拘ることなく, 自我發見 無常迅速諸緣放下 心身閑處 佛道修行への「道」をれかリやすく說いた人間の書とも佛書ともぃえる.