上代日本詩が, 八, 七, 六母音說という, 樣樣な說が出され, 學界では未だ論爭がくりかえされている, それで, 筆者は, より根源的な問題をとりあげて考察し, 問題の究明をはかろうと計劃し, まず, 「キ(ギ)甲乙」の用字法について再檢討してみたのであるが, その方法論として, これらの漢字の上古漠語の音價を調べ, それと同時に, 上古漢語から切韻までの中國語音韻史の變化をたどってみた. 一方, 近世朝鮮朝の諸文獻に載せられてある漠字音の反映された內容と, また, 古代韓國語の i 母音と關連される諸樣相を硏究した諸論文を參考する等, 以上のような考察の結果をまとめて, 日本上代語の「キ(ギ)甲乙の音價を推定してみた. その結果として,「キ(ギ)甲乙」の母音音價は, 各各 i と i であると推定した.