「古事記」および『日本書紀』を中心とした「記紀神話」は天皇の支配權の正統性をあらわすために書かれた神話である. このような王權の支配 原理を語る記紀神話の中で海幸山幸神話が持っている意味について考察を試みた. 海辛山幸神話に見られるホオリの海宮訪問は, 王權の擴大を意味するものである. 記紀神話の構造からみて, 王權の擴大は他界の女性と婚姻によって高天原と系譜約なつながりを持って行われた. 記紀神話の中で海幸山幸神話が持っている意味は海洋への王權の擴大である. これは, 天皇の祖先たちは地上の國土の支配權だけでなく, 地下の世界, 海洋の世界へまで聖性を擴大させ, 天皇の世代までその聖性が受けつがれていることを物語っているのである.