日本語には話し手が自分がもっている情報と同じ情報が聞き手にもあるということを確信し, それを聞き手に確認しようとするいわゆる確認要求表現というのがある. その代表的な表現形式には「ね」「だろう」 「じゃないか」がある. これらの表現は文末に位置し, 多樣な意味を表しているが, 共通的に確認要求という意味をもっていると言える. ところが, これらの表現を注意深くしらべてみると, もうひとつの共通的な用法を見つけることができる. それはいままで「ね」をのぞいてはほとんど取り上げられていないが, 話し手の聞き手に對する情報共有志向という語用論的な用法である. 「ね」「だろう」「じゃないか」は確認·同意(共有情報確認)要求という本來の機能を用い, 必らずしも確認·同意(共有情報確認)要求が必要な文脈や場面でもないのに話し手に使われ , 話し手の主張き聞き手が受け入れやすくするように聞き手にも話し手と同じような主張や情報が存在しているかのように見せかける情報共有志向の動きをしている. また, これらの表現は次のような共通的な語用論的特徵を有している. a. 省略しても文脈上大きな意味の違いはない. b. 情報領域は話し手に減する. c. 聞き手に對する確認·同意(共有情報確認)要求ではなく, 話し手の主張に近い. d. 話し手と聞き手との共通の情報領域を想定することで, 話し手の主張を和らげ, 聞き手が受け入れやすくする.