本稿では, 受動文の動作體のとる助詞の交換が可能か不可能について, 先行硏究をふまえながら, 助詞「に」 「から」 「によって」のもつ本來の意味に注目し, この問題の解決をこころみた. さらに助詞とともにもちいられる動詞の性質また主語と對象語の性質 (特徵) についても考察してみた. 本稿を通じて明らかになった点は, 以下のようである. 1) 「動作主體·相手·起点」を表す「に」格と「から」格は, 同樣の性格であり, 交換が可能であると考えられるが, 心理的동きかけを表す動詞を用いた場合は, 同樣の動詞であっても「から」格の方は意味のずれ (比喩的な轉移) がみられる. 2) 「原因」を表す「に」格と「によって」格の中で, 主語が無情物の場合はお互い, 關係が離れていると考えられ, 「によって」が用いられる. 3) 「動作主體」を表す「に」格と「によって」格は, 「に」格が用いられる場合は對象に變化を起こす動詞が多い. 4) 「自然現象」「道具·材料」を表す受動文は動詞の表す동きかけが對象語と主語とが接觸しながら行われるため, 「に」格が用いられたと思われる. それ以外にも, この「自然現象」には「原因」の性質もみられる.