本稿では約束の取り消しの對話場面を調査對象にし、取り消し側と取消しされる側の對話に表れる談話スタイルを考察した。今回の調査は日本人の取り消し表現における談話スタイルに對する考察の第一の段階として、まず、東北地方出身の大學生71組を調査對象に、アンケ―トの予備調査を實施し、その後、錄音調査をして、それを文字化して分析を行った。考察の際、取り消し側と取消しされる側の間で行われるコミュニケ―ションを對象にし、①事前の約束事項を確かめる段階②取消しの暗示③取消しされる側に對する謝罪④取り消しの理由提示及びその理由の具體性⑤取消しに對する對案提示などを念頭に入れて考察した。小論で考察した結果をまとめると、以下のようになる。まず、序頭談話では、話題の轉換、呼び掛け、애찰の順で、コミュニケ―ションが行われ、取り消し談話と言える約束の確認と約束の取り消しの暗示は取り消し理由を提示する前に一回、取消しの理由の提示は具體的に―回、約束の取り消しに對する謝罪の場合は取り消しの理由を提示した後、繰り返して表れている。このことから取り消し側の取消しされる側への濟まないと思われる心と配慮が窺われる。次に、取り消しの理由に對する提案提示の場合は、漠然型と具體型の2つのパタンであり、提案提示の場合は一回と繰り返しがほぼ同じく表れ、その後揷入談話が續いて表れる。取り消しの談話スタイルの分析で興味深った点は、成立した約束を確認したり、約束の提案を提示するのは取り消し側だけでなく、取り消しされる側も積極的に約束を確認したり、日付や曜日、時間などを變更する對案を提示する樣相が見える。これは取り消し側の立場への取り消しされる側からの配慮を見せている談話スタイルと言える。最後に、終結談話では、謝罪、確認、勵まし、殘念、報いなどの順で一次的對話が窺われており、對話をまとめる二次的對話では、同意、感謝、配慮、애찰、お願いの談話スタイルでコミュニケ―ションが行われている。