本稿は、「源氏物語」の韓國語譯を、底本と文體、卷名·人物名·地名などの固有名詞の表記、和歌と引歌の飜譯、草子地の飜譯、敬語の飜譯などを分析することによって、金蘭周譯「ゲンジイヤギ」の特徵と問題点について考察してみたものである。洗練された文體と卷名の由來に近い飜譯、卷名の意味と由來についての說明、語句解說と引歌を卷末に收錄し、韓國讀者の理解に役立てた点などは金蘭周驛「ゲンジイヤギ」の特徵と言えよう。しかし、金蘭周譯「ゲンジイヤギ」は、瀨戶內寂聽の現代語譯をそのまま韓國語に譯した点で、寂聽譯の抱えている問題もそのまま金蘭周譯「ゲンジイヤギ」の問題に繫がるしかないであろう。そのため、金蘭周も「譯者のエピロ―グ」で、日本語の言語遊戱を充分生かせなかった点、底本が瀨戶內寂聽譯「源氏物語」とはいえ、現代の日常で使われる日本語ではない点、數數の古語、服飾に關する用語など、現代の韓國語に譯せない難しい用語、引歌における古語、主語が明確ではない文章などを、飜譯の難關として提示してはいるが、何よりも誤譯と欠落を無くし、和歌の音數律、歌枕の?譯、敬語の飜譯など、テキストの意味·內容に卽したより充實な飜譯は解決すべき問題点と言わざるを得ないだろう。