本硏究は、宮澤賢治の「農民藝術槪論綱要」(以下、「綱要」)を中心にその構成內容、および特性を當時の「農民」一派とプロレ夕リア同盟者文學としての農民文學を踏まえながら求めた。宮澤賢治の「農民藝術槪論綱要」は1926年一月から三月にかけて、岩手?國民高等學校で行われた講演を元にしたものである。賢治は「綱要」の序論で振れているように彼の農民藝術論は世界全體が宰福になる道を探すための一つの試みであった。特に、賢治においてそれは岩手?の農民を對象に行われた。「綱要」において、重要なところは個人と全體の幸福は宇宙意志を心の中に持つことであって、それは、彼が信じていた法華經の大乘佛敎の思想に基づいている。又、賢治は四次元の芸術の産者として主體的な農民像を提示している。新しい農民である宇宙感情の地人は、「綱要」で求めている主體としての農民である。以上のまとめから、賢治の農民芸術論は、都市と二項對立として農村自治を唱えた「農民」一派とも、異なっている。しかし、農民文學の主體は農民であると主張したプロレタリア文學論者とは同じ視座ではあったが、彼らとも異なったところは、賢治の藝術論は無産者革命を圖るより、農民の生活をもっと明るく、生き生きとしたものにする生活においての藝術を唱えたのである。