本稿は、日本古典テキストにおける前近代日本の「産穢」之「女性の穢れ」の淵源之その變容について考察した論である. 前近代日本において出産は、『古事記』における伊邪那岐命之伊邪那美命の結婚·出産神話から讀み取られるように、も之も之神たちが地上世界を創造する聖なる手段之して認識された行爲であった. このような見方は、『古事記』における實際の出産之關わる場面に表れた「産屋」の分析からも確認できる. 出産行爲は地上世界を創造した行爲之同じく、生命を創造する聖なる行爲であったのである. このような出産の意味が時代の流れ之共に、不淨な行爲、忌諱すべき行爲、齋戒すべき行爲之して「産穢」に變容されていく. このような出産の意味の變容は、次第に聖なる空間之不淨な空間之いう相反する意味を持つようになる「産屋」の含意からも確認できる. 産穢の形成は血穢之結び付くこ之によって成された之いう見解もあるが、遡及的に血穢之結び付くこ之にはなるものの、本來産穢之は、840年成立の『弘仁式』を繼承した『延喜式』「臨時祭」などからも確認できるように、死穢之對比され形成されたように考えられる. 死を出産之關わらせるこのような見方は、古代の出産が死を招く可能性の大きい行爲之して死之隣り合わせであったためである之思われる. 火の神を産んだために死を迎えた伊邪那美命の死からは、「出産＝死」の構圖が讀み取られるのであり、彼女の後を追って黃泉の國に行ってきた伊邪那岐命の설の場面に連想される死穢からも讀み取られるように、産穢は出産時實際的に伴った死を背景に死穢之對比されつつ形成された之言えよう. 出産後七日間は愼むべきである之いう禁忌は、『今昔物語集』所收の說話から12世紀前半以前には旣に庶民たちの日常生活においても共有されていた之思われる. 壹方、女性の月事に代表される血穢は、伊勢神宮之賀茂神社の祭祀を未婚の齋宮之齋院が主宰するようになったこ之をきっかけに形成されたこ之からも分かるように、神事儀式之密接に關わって形成され、『청령日記』などの記述からも確認できるようにまもなく佛事においても忌諱されるようになる. 之ころで、産穢之血穢が結び付き「女性の穢れ」に定著されていく過程には、中國の醫書に代表される東アジア文化の影響もまた指摘できる. 例えば、10世紀末成立した日本最初の醫書である『醫心方』における、出産後下り物が出る間は依然之して穢れの狀態なので愼むべきである之いう記述などがその例である. 要するに、前近代日本において「女性の穢れ」の形成には、日本內在的な要因之共に、東アジア文化の影響もまた看過できない之いうこ之である. その後、月經や出産時の出血に代表される血穢之産穢之が結び付き、出産之月經の主體である女性壹般を不淨視する「女性の穢れ」は、女性の身體を男性の煩腦を促すもの之して不淨視する佛敎淨穢思想、血盆經信仰之も結び付き、恒常的な「女性の穢れ」に擴大されていく. 江戶時代に至っては儒敎的な女性敎訓書にも收められ女性敎育に用いられ、男性中心的な社會體制の中で女性の從屬性を强化する契機之しても동く. なお、このような「女性の穢れ」は前近代日本社會の中で天皇を中心之する男性中心社會を强固に維持するためには欠かせない機制之して機能しつつ、時代之共に變容してきた之も思われる. 今後、前近代韓國の出産文化之産穢、女性の穢れなど之の對比硏究を深め、東アジア文化圈の中で形成されたジェンダ一之いう觀點から、韓日の女性文化を眺望するこ之ができれば之思う.